シリアの伝統工芸

 シリアの首都ダマスカスは、4千年以上の歴史を持つ「世界最古の都市」とも言われ、その深い歴史文化の中で、寄木細工を初め螺鈿・象嵌・木彫・織物・刺繍・化粧品など数多くの工芸技術が発達しました。シリア産工芸品の高品質さと精巧さは、中東地域のみならず世界でも広く知られています。

 

寄木細工

 シリア・ダマスカス地域の伝統工芸である寄木細工。

 その歴史は16世紀ごろまでさかのぼり、シルクロードを通って日本へ伝来、箱根寄木細工のルーツになったといわれています。

 

 シリアの寄木細工の作り方は、日本の伝統工芸である寄木細工と似た工程です。しかし、日本の寄木のように、完成した寄木材をカンナで薄く削り出すのではなく、それぞれの寄木材を輪切りにして、土台となる木箱や家具の表面に、一つ一つニカワで貼り付けていきます。

 

 そのため、丸テーブルやアラブの伝統楽器であるウードといった製品の表面に全てのパーツを上下左右対称に並べるには、事前に綿密な計算が必要となります。

 

象嵌ぞうがん螺鈿らでん細工

 シリアでは、イスラム文化の発展に伴い、木製の家具や小物の表面に貝殻や銀など埋め込む象嵌・螺鈿細工が盛んに行われるようになりました。

 まず、丸のままの真珠貝やアワビの貝殻から、内側が平らで汚れのない部分を切り出します。

 

 

 切り出した貝殻をさらに細かく切り分け、三角形や涙型など、さまざまな形に研磨します。できるだけ薄く平らに、しかし削りすぎて真珠層の輝きが失われないよう、一つ一つ丁寧に研磨していきます。

 

 木製品の表面に溝を掘り込み、切り出した貝殻のパーツや銀のワイヤーを埋め込んでいきます。

 この写真は、70年以上前に製作された食器棚を修復しているところです。

 

 金属や真珠貝の他、ラクダの骨や鼈甲(べっこう)、アフリカやインド産の貴重な木材など、シリアの象嵌では様々な素材が装飾に使われます。